オンライン医学部予備校

2023年度入試で医学部(東大京大)への合格を目指す全ての受験生をサポートします。

親子という病

前回からの続き。

「あまりにも勉強のヤル気が起きない」場合、疲れているのでなければ、多かれ少なかれ「病んでいる」場合がある。いわゆる「受験うつ」は、かなり多くの受験生に見られる症状だ。あまりにも気分が沈み、自分を責めたくなる気持ちが強まったり、だんだん朝起きられなくなったりする等の兆候が出てきたら、一度、無理せず心療内科などのドアを叩いてみるとよいかもしれない。

 

問題は、無気力になる原因が長期にわたって形成されてきたケースである。受験指導にたずさわる人間として大声で指摘しにくいが、ズバリ親子関係の問題だ。

 

繰り返しになるが、わたくしQ氏は、(関心こそあれ)こころの専門家ではない。

が、長年にわたる学習指導の仕事を通じて、ひとがいかに親子関係に縛られるものかということを痛感している。

いま流行りの「毒親」というワードは過度に刺激的で、「発達障害」という言葉同様、やたらに振り回すのはどうなのかな…と疑問を抱く。すべては程度の差だから。

が、幼少期からの親御さんの過干渉(受験の場面で問題になるのは、ネグレクトよりもまず過干渉である)によって、医学部入試にとどまらず、苛烈な大学入試にまったく立ち向かえないほど、心にダメージを受けてしまう受験生は非常に多い。

 

親御さんはよかれと思って、お子さんの当座の進路のみならず、人生そのものにあれこれと指示を出し、ダメ出しをなさる。

「よかれと思って」がよくないということに、ほとんど気づかないらしい。話してみると、親御さんご自身が非常にせっかち・短絡的で、なおかつ人の話を聞くのが上手ではないケースが多い気がする。

お子さんだって立ち止まりたくなる時はありますよ…とこちらが話している最中に、その言葉にかぶせるようにして、

 

「でも医学部に行って安定した地位と収入と、仕事のやりがいを得た方がいいでしょう。それができるんなら、やった方がいいじゃないですか。なぜうちの息子(娘)はそうしないのかと、わたしは心配で心配で、悔しくて悔しくて…。」

 

いやいやいやいやいやいやいやいやお母さん、お父さん。いいか悪いかを決めるのはお子さん本人ですから。あなたじゃない。

あなた、お子さんより長生きして、そうやってお子さんの人生のレールを、ぜんぶ先回りして敷くつもりですか。

そうして敷かれたレールの上をただ進むのが、お子さんにとっていちばん幸せだとでも?

それに、そもそもなんであなたが「悔しい」んですか。お子さんご本人ではないのに…?

 

…と言いたいのだが、実際にはかなりオブラートに包んで指摘するのが常である。なぜなら、言っても聞かないタイプの方だというのが、話しているとだいたい分かってしまう場合がほとんどだから。

ザ★ディスコミュニケーション

 

Q氏は学習指導ならば仕事として引き受けるが、カウンセラーではない。

ラジオの長寿番組「テレフォン人生相談」の加藤諦三先生やマドモアゼル・愛先生のように、中高年男性の威厳をにじませながら、その場でビシッと指摘して終われればよい。

だが、親御さんのお子さんに関する愚痴はだいたい延々と続くし、実際にビシッと指摘すれば、こちらと親御さんとの関係が確実に悪化する。

Q氏と親御さんとの関係が悪化しても、それだけなら別に構わないのだが、関係悪化によって親御さんがお子さんを囲い込んでしまい、こちらからお子さんに一切アプローチできなくなってしまうという問題が生じる。

 

なかなかデリケートで、難しい話題である。

が、元のテーマだった「受験生のヤル気がとうとう起きないケース」の分析には避けて通れない話なので、まだまだ次回につづく。