オンライン医学部予備校

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ハードルは上げるのではなく、下げるもの

 勉強は、習慣化しないと量をこなせない。定量をこなさなければ、あなたの夢、あなたの青い鳥はたちまち手許から飛び去り、二度と帰ってこない。習慣という女神様に気に入られなければ、あなたは人生のスタートラインにも立てないのかもしれない。

 しかし、女神様に気に入られるために、毎日、地獄の苦行を重ねなければならないのではないか…と悲壮な覚悟にうち震えている人は、ちょっと待った。

 あまり深刻に考えない方がよい。習慣化とは、やることのハードルを上げることではなく、ひたすらハードルを下げることなのである。

 

 たとえば、勉強を勉強部屋で、しかも自分の机に座ってやらないとできない「習慣づけ」をしている人。家に帰れない間はどうするのか。帰っても、リビングで食事をしている時はどうするのか。お風呂に入っているときはどうする。机以外で勉強できないのなら、机に座れない時間はいっさい勉強に使えなくなる。無駄なすきま時間が大量に発生してしまう。

 

 また、参考書をカバンの奥底にしまいこんでいる人。英単語は必ず電子辞書で調べることにし、しかもその電子辞書を大事にケースにしまっている人。分からないところを最近はネットで調べているが、スマホタブレットをいちいち取り出し、電源を入れ、検索する文字列を逐一入力したり、たまに充電したりする手間をかけている人。問題集をきれいに使いたいから、新品のときの帯をまだつけている人。分からなかったところに付箋を貼る習慣があるが、その付箋がカバンの底のあちこちに散らばってしまっている人。

 これらはすべて「勉強を始めるまでの物理的な手間を増やす習慣」である。

 

 人間は、ちょっとでも「めんどくさい」と思ったら、もうやらない生き物だ。芸をさぼりたがる猿回しのサルと同じ。受験生諸君も、「いざやれば簡単なのに、何となくめんどくさいから、もう何か月もやっていないこと」の1つや2つ、必ずあるのではないか。メールやラインの返信とか、部屋の片づけとか、締切りが迫った懸賞の応募とか。アイスの箱のマークをせっせと集めて海外旅行プレゼントに応募する予定だったのに、切手を買うのがめんどくさくて締切りを過ぎてしまった…とか。

 切手ぐらい買えよ…という。でも、いざとなるとやらないんだよね。

 

 懸賞の応募は忘れても人生にあまり影響しないが、「めんどくさいから勉強をやらない時間」の蓄積は、勉強の絶対量をかせがなければならない受験生の首を、確実に絞める。

 だからこそ、極力「勉強するのがめんどくさくない」環境を作ることが必要なのだ。思いついた時に、いつでもパッと勉強にとりかかれる態勢づくりである。

 

 紙1枚の差であっても、勉強を始めるまでの物理的なハードルが存在するのなら、それを取り除く。勉強するポジションにすぐ着けるようにする。勉強に使う道具は、サッと出してサッとしまえるようにする。

 

 やらなければならないことを「先延ばし」する心理については近年、さまざまな医学的・心理学的知見が積み重ねられており、あまり単純な現象でないことが分かっているようだ。

 だが、勉強に取りかかる前の物理的ハードルを下げることは、勉強開始を「先延ばし」する癖に対して、それなりに効果があるのではないかと思う。物理的ハードルを下げることは、即、心理的なハードルを下げることにつながる。

 

 …というところできょうの紙数が尽きた。物理的ハードルを下げる工夫については、また次回。