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大学入試はどこへ行くのか(2)

三が日もすぐ終わってしまいますね。皆さんは初詣などには行きましたか?

わたくしQ氏はもう何年も行ってません。人ごみが苦手なもんで。

 

さて、お正月特別企画「推薦・AO入試は是か非か?」の続きである。

 

前回は推薦入試について概観したが、今度はAO入試(総合型選抜)を見てみよう。この「旧AO」が、一般入試の受験生から特に「不公平」だと評判が悪かった入試制度である。

 

AO入試には学校推薦の縛りはなく、出願条件も試験内容もまちまちであるが、総合型選抜という名称になってからは、小論文や口頭試問で知的レベルに関するチェックが入る形になっているようだ。

いわゆる「一芸入試」と言われた昔から、大学側からすれば、特別なアピールポイントを持っている学生を拾い上げて学生の多様性を確保する入試制度であった。

いわゆる難関私大では、今でもAO合格のためには、特別活動や研究計画などにおける「めちゃくちゃ高い」ハードルが課されている。が、大学によっては割に「ユルい」と感じられるAO入試もある。どういうアピールポイントがあればAO入試に合格できるのかは、やはり大学ごとに大きく違うとしか言いようがなさそうである。

 

が、AO入試では多くの大学で学力検査が課されないことから、受験生側からすれば学力競争回避の手段として利用できるという、「穴場」感に目が向いたようである。年々、志願者が増えてきた。現にQ氏の体感でも、AO入試の志願者は、2015年あたりを境に、もはや押しとどめられぬ勢いで増加している印象である。

 

AO志願者に聞くと、出願動機としてかなりの割合で「(心理的安定と生活設計上)大学合格をできるだけ早く決めたい」という声が聞かれる。

ほぼ一般入試しかなかった中で「受験勉強=過酷」と刷り込まれてきた世代としては、「大学合格は、したいと思ってできるものではなく、あくまでも許可されないといけないんだから、へたすれば2浪も3浪もするし、早くもへったくれもないんじゃないですかねえ…」と思ってしまうのだが、それは4年制大学進学者が同学年の5割を超えた、こんにちの受験生の常識ではないらしい。

 

とはいえ、AO入試合格者自体は2020年度の文科省調査で、大学入学者(延べ人数)全体の10.4%にとどまる。いちばん比率が高い私立大学で13.4%だから、実はAO入試の合格者は、大学入学者全体の中ではまだまだ絶対的少数派である。ABO式血液型で言うとAB型の比率くらいですね。

ということは、「AO入試は適正比率で運用されている」と言えるのではないか。一般受験生が抱く不公平感の原因は、AO入試ではないようにも思われるのである。

 

ひるがえって、同じ2020年度の文科省調査によれば、大学入学者全体に占める推薦入試合格者の比率は34.1%AO入試合格者と合わせて45%となる。

こうなると、確かにかなり多い印象である。

この推薦+AO合格者の入学者に占める比率を見ると、

 

〇国立大学12.2%(推薦8.9%,AO3.3%)

公立大学27.9%(推薦25.0%,AO2.9%)

〇私立大学55.6%(推薦42.0%,AO13.6%)

 

となる。

この数字を見てわかる通り、推薦・AO合格者増加に伴う「不公平問題」は、目下は主に私立大学入試に関して生じていると言えるだろう。

が、国公立大学でも推薦・AO入試の比率は増しており、国立大学協会は既に入学者選抜の「実施要領」(2020年度)において、推薦+AO入学者の比率を学部・学科の募集人員の「5割を超えない範囲」としている。反対解釈を下せば、5割までは増やす、ということである。この「5割」までという数字は、今後、推薦・AO入試による入学者確保の許容範囲とされることだろう。

 

これを多いと見るか、少ないと見るか。

Q氏から見れば、これは多い気がする。明らかに、一般入試に向けて勉強する受験生のモチベーションは落ちる。どんどん少なくなる一般入試枠での合格を目指して日々、三島由紀夫みたいなハチマキをして泣きながら受験勉強するくらいならば、何かにわか一芸を磨いてAO合格する方がマシだ…という気持ちは分からないではない。

 

「学力偏重をやめる」のはよいが、現行の制度では大学側のカリキュラム改革も伴わないことには、学士のレベルがガタ落ちする危険性が大いにあるだろう。もともと、日本の大学の学士号は、本当に保持者の学力の保証になっているのかどうか「わけ分からない」だけに、学士号保持者の質がいま以上にカオスな状態に陥ることは、目に見える気がする。それとも、1級学士、2級学士などの区分を設けるのか。

 

どうもこの手の改革をやると、多様な人材の確保という目的はある程度果たせるだろうとは思うが、一方で「国民挙げての『勉強するだけ損』な気風」を醸成することに手を貸してしまうという、モラルハザード(道徳ルールを守らない人が増えることによる危機的状況)問題が生じると思う。少なくとも制度の過渡期では、モラルハザードは避けられないだろう。

 

だから、Q氏はこの制度改革を静観しつつ、今のところは、厳しい一般入試にあえて挑む受験生の味方をすると決めている。

 

医学部受験生諸君、制度の変更などは世の常である。いちいち惑わされず、関門はまず正面から突破するよう努力しよう。推薦とAOが「楽をする道」だとは必ずしも言えないが、人生においては、あまり楽をすることばかり考えない方がいいのである。

楽をすると、生きる筋力がつかない。

 

あと少し、この問題を取り上げる。そうしたら、また共通テスト国語に戻ろう。そろそろ入試本番である。