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共通テスト国語2023 (11)──古文②_本文の概要2

日一日と春の気配が増します。このあたりの季節の移り変わりはほんとうに微妙ですね。

さて、共通テスト2023・第3問(古文)のつづきである。引き続き本文の概要を示そう。

 

【第3段落】

舟遊びに出てきている僧侶たちの中に良選という歌よみがいたが、船上の殿上人のひとりがかれを知っていたので、良選を船に乗せて連歌をさせてみたらどうだろうと提案した。が、船に乗せるのは(身分上)ふさわしくないという話になったため、良選に、池の端に控えたまま、この場にふさわしい連歌を詠み出すよう求めたが、良選はあらかじめ準備していたらしく、かたわらにいた僧にことづけて、

   もみぢ葉のこがれて見ゆる御船かな

 という発句を詠み出した。

※本文の中で最も意味が取りにくい段落と思われる。まず、せりふの主は誰かいちいち考えなければならない。

※また、良選を船に乗せて連歌をさせようと提案した殿上人の1人に対し、

「『いかが。あるべからず。後の人や、さらでもありぬべかりけることかなとや申さむ』などありければ、さもあることとて、乗せずして、たださながら連歌などはせさせてむなど定めて」

のくだりは、

「『どうしてそんなことを。それはまずいだろう。後代の人が、そんなことはしなくてもよかったことなのになあ、と申すのではないだろうか(悪しき先例になってしまうのではないだろうか)』などと言われたので、なるほどそうだなあというわけで、(良選を船には)乗せないで、ただそのまま(その場で)連歌などをさせようと決めて」

という意味でよいだろうが、良選を船に乗せなかったのは、もちろん身分が卑しいためであろう。古文を読んでいると気づくが、和歌の名手といえども往々にして身分が低く、天皇や殿上人がその歌人を褒めたり、褒美を取らせたりする場面に際し、「身分が低いものに対して異例だ」という作者の評価が下されることが多い。

 

【第4段落】

人々がこれを聞いて、船上に触れ回ったが、船に乗っている貴人たちはタイミングを逃して次の句を付けられず、築島を船で1周する間にも付けることができなかった。船じゅうの人々が付け句をしようと焦ったが、島を2周しても誰も思い浮かばなかったため、船を漕ぐのをやめて島の陰に隠れて、もはや付け句を考えるよりも、付け句ができぬまま日が暮れてしまったことを悔やんでいるうちに、あたりは真っ暗になった。

「かへすがへすもわろきことなり。これを今まで付けぬは。」「どう考えてもまずいことだ。(身分の低い良選が詠み出した)この発句に(並みいる殿上人が誰も)句を付けられないのは。」の意味であろう。要するに、貴族たちのメンツが丸つぶれなのである。

共通テスト名物、問4「話し合い」に出てくるが、良選の発句(連歌の第一句)は掛詞を活かしたうまい出だしだったので、それに応ずるようなレベルの高い句を付けねばならず、殿上人たちはプレッシャーで詠めなくなってしまったのである。

※最後の行の「何事も覚えずなりぬ」は、もちろん「意識がなくなってしまった」などではなく、「何も分からないほど真っ暗になった」の意味であろう。

 

【第5段落】

せっかく楽人たちまで船に乗せたのに、(あまりの気まずさに)音楽を奏でる人もいなくなり、そのままになってしまった。貴人たちが船であれこれ話し合っているうちに、普賢堂の前にいた多くの人も、皆立ち去った。貴人たちは船から下りて、気を取り直して(皇后寛子と頼道の)前で管弦の遊びをしようとしたが、それに反して皆逃げるようにしていなくなってしまった。宮司が(管弦の遊びの)準備をしたが、むだになってしまった。

※2~3行目「たがふ」「相違する・反する・合わない」の意味だが、「このことにたがひて」「このこと」「御前にて遊ばむなど思ひ(管弦の遊びをしようという企画)」のことと考えるのが一番自然ではないだろうか。船遊びの際に誰も適切な付け句をできなかったことで場が完全に白けてしまい、せっかくの寛子のための宴が台なしになった、という話である。

 

この「説話」の教訓は、

①良選の発句がすばらしく、誰も後を付けることができないほどの秀句であった

という意味なのか、

②せっかく紅葉の趣向を考えついた殿上人も、連歌に関してはだらしない無能な集団にすぎなかった

という意味なのか、

③宮中のこのエピソードは作者の源俊頼の生まれる前後くらいの出来事なので、それを伝え聞いていた壮年の俊頼が、単なる昔話として後世に伝えようとしている

のか、よく分からないが、問4の話し合いを見ると「こういう時は気負わず句を付けるとよい」という、場面場面を臨機応変に乗り切るべき心得を説いた話らしい。

 

このように、だいたい話の筋が分かれば、現代文に比べて設問も基礎的なものが多く、取り組みやすかったかもしれない。

設問は次回に検討しよう。