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共通テスト国語2023 (12)──古文③_選択肢の検討

共通テスト2023・第3問(古文)のつづき、選択肢の検討コーナーである。

 

まず問1。この種の語句問題は、

①「やうやう」などの古語の辞書的な意味を問う意図と、

文脈に当てはめてみて最も意味が通じやすい選択肢を選ばせる意図との、

2つの題意を含んでいることが多い。が、まずは②のように、文脈に当てはめてみて最もよく意味が通じるものを選ぶのが優先である。最初に②の基準で2択くらいまで絞ってから、記憶している古語の意味を①のように当てはめてみるとよいと思う。

たまに微妙な問題が出るが、第3問の古文全体を通じて、最も紛らわしい問題が出やすいのもこの問1である。間違えたら間違えたで、いさぎよく諦めるべき部分である。配点の高い他の問いを落とさないことだ。肉を切らせて骨を断つ。

 

問2の文法問題も、センター試験時代とあまり変わらない。基礎的な品詞分解や意味の識別などがきちんとできるかどうかを確かめている。正解は③だが、

「若からむ」「形容詞『若し』のカリ活用未然形『若から』+婉曲の助動詞『む』連体形」「断定的に記述することを避けた表現」は〇。

「侍り」はこの場合丁寧語ではなく謙譲語「お控えしている」の意味。「読み手への敬意」ではなく、殿上人への敬意

「ぬ」打消しの助動詞「ず」の連体形であり、「『人々』の驚きを強調した表現」「ぬ」ではなく終助詞「は」のこと。

「覚えずなりぬ」「なり」動詞「なる」の連用形「今後の成り行きを読み手に予想させる表現」はまったく当てはまらない。

文法力がしっかりしていれば、さほど難しい設問ではない。

 

問3は本文の内容に一致する選択肢を選ぶ問題だが、本文が比較的理解しやすい内容だっただけに、これも容易かもしれない。前回までの「概要」参照のこと。

紛らわしい選択肢は強いて言えば③だが、良選が船に乗ることを辞退したのではなく、殿上人が乗せなかったのである。「句を求められたことには喜びを感じていた」直接本文には書いていない。あらかじめ句を用意しているところから見て、やる気満々だったことは想像できないではないが。

 

難しいと言える設問は問4だけだろう。

(ⅰ)は掛詞を問う設問である。「釣殿」は池に張り出した廊下のような部分だが、俊重の発句はそれに「釣り」をかけて「釣殿というくらいだから、釣られてしまわないよう、その下に魚は住まないんだろうな」と言うと同時に、「住む=澄む」の掛詞も使って「釣殿の下の水は澄んでいないのかな」という意味もかぶせている。なかなか技巧的である。

俊頼の付け句は、「確かに魚は住まないんだろうね。うつばり=針の影が見えているからね」「うつばり」「(釣)針」をかけた掛詞を使うと同時に「そこ=底」の掛詞も駆使し、「いや、水は澄んでいるんじゃないだろうか。水の底にうつばりの影が映るくらいだから」と言っているわけである。選択肢の正解は④だが、正解の選択肢で「住む=澄む」と「そこ=底」の掛詞をわざと伏せているところが意地悪である。

(ⅱ)は改めて本文中の良選の発句の解釈を問う問題。掛詞の知識を踏まえて検討しろ、という、割に親切な誘導をつけた設問である。消去法で行くとよいかもしれないが、選択肢③の「紅葉=寛子」「船=藤原氏」という解釈も完全に間違っているとは思えないような気がしてくる。しかし、③の解釈は掛詞について一切触れていないのに対し、「こがれて」の掛詞に矛盾のない解釈を示している①の方が、正解とするのにふさわしいことはふさわしい。
(ⅲ)も本文の内容がつかめれば容易かと思う。正解は③。問4を通じて選択肢が4つであることは、話し合いなどの内容を通じて考えさせる代わりに、センターさんが受験生への時間的配慮を見せてくれているのだろう。

 

以上、古文は現代文に比べて平易であった。今回は現代文がかなり難しく問題数も多いので、問題間調整をした結果であろうか。

 

一時、某ネット百科事典センター試験(当時)の作問体制」についてのまことしやかな情報が出回ったことがあり、試験問題作成者には小問1問ごとに1人の委員が当たり、他の問題を見ずに個別に作問することを求められ、自分の作った問題以外を最後まで見る機会がない…などと書かれていた。

が、実際の問題を見る限り、設問を施す箇所は相互の関連を考えて選ばれており、第1~第4問の全体を見渡した問題間調整も明らかに行われている。問題漏洩を防ぐためとはいえ、誰も全体を見渡すことなしに、個別に作成した小問をただ集めているという方式は、実際出来上がってきた問題からは考えにくい。

 

ともあれ、来年以降の受験生は問題がどうやって作られているかなどの情報には無関心でよいから、古典文法の力をしっかり磨いて、現代文と同じく、問題演習には旧センターから蓄積された過去問を使うのでじゅうぶんだと思う。

 

それでは次回から、第4問の漢文を急いで検討しよう。