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ニッポン学歴社会13──既得権益の問題(1)

国公立大学後期試験の合格発表では、全国の受験生諸君のもとに、また悲喜こもごもの結果が訪れていることだろう。新年度に向かって事実は動いていく。新年度の過ごし方がもう決まった皆さんは、なるべく淡々と毎日の課題をこなすことを考えてみてはいかがかと思う。わたくしQ氏は随所で申し上げているが、「目前のことに淡々と」というやり方のほかに、一足飛びに毎日を充実させてくれる方法があるわけではないように思う。目前の何秒かを精一杯過ごし、その次の何秒かを精一杯過ごし…その繰り返しではないかと。

特に苦しい時ほど、そうやって過ごしていくことで、日々の流れをこらえていきやすくなる。

どんな境遇にあっても、できる限り淡々と、静かにいきましょう。

 

さて、ここしばらくは呑気に、Q氏の考える「学歴」シリーズをお送りしてきたが、とうとう「高学歴バカ」という問題にたどり着いた。「高学歴バカ」は「性格バカ」であり、かれらがそういう困ったちゃんな性格になってしまうのは、既得権益にあぐらをかいて変化を怠ってしまうからではないか…というところにたどり着いた。

権力の腐敗…これこそ「高学歴バカ」問題の本質である。

 

ここで改めて、人間の、あるいは日本人の既得権益を守ろうとする志向」の強さをしみじみと感じる。

これは、もうほとんど「動物の本能」だろうと思う。犬や猫を飼っているとよく分かるが、かれらは一度ぜいたくな餌に慣らしてしまうと、量・質において、餌のレベルを決して下げられなくなる。Q氏のところでも保護猫を何匹か飼っているが、巷のネコ飼いの間では当たり前になっている「ちゅ~る(『Chaoちゅ~る』などの半ナマのおやつ)を決して与えないようにしている。なぜなら、一度「ちゅ~る」を与えると、猫が「ちゅ~る」なしではいられなくなり、多頭飼いのわが家は「ちゅ~る」代だけで破産することが分かっているからである。人食いグマが人間を襲うのも、人間が「おいしい」ので、一度味を覚えてしまうとまた食べたくなり、生活レベルを下げられなくなるからだ…というオソロシイ話を聞いたこともある(ちなみに、人間はブタの味に似ているそうな)。

 

人間だって、既得権益は手放せない。よく「収入が減ったのに生活レベルが下げられず、浪費・贅沢をして自己破産へと『ネコまっしぐら』という人の話を聞く。オトナになると身の回りに必ず1人くらい見聞するので、そういう人は日本にも百万人のオーダーで存在するのだろう。

既得権益にしがみつくのは人間のみならず動物の性(さが)なので、致し方ないことは致し方ないのだが、人間の場合、「社会的に権力を握る者が既得権益にしがみつく」という現象が目立ってくることになる。この行動が、実は非常に矛盾しているのである。

 

人間は社会的動物なので、社会をよりよく維持することが、その構成員である個人の幸福につながる。個体が孤立して、或いはつがいと生まれたばかりの子供くらいの小単位で生きていくのならば、発見した餌はすべて自分のものとし、自分(とせいぜい「家族」)の利益を最大化する生き方をすればよい。多くの動物はこの方法で生きているのである。

が、人間は家族という小単位を超えて「より広い仲間とのつながりを維持し、円滑化する」ことにより、自分の生存を図らなければならない。お米を作る人、食肉を処理する人、家を建てる人、衣服を縫う人、自動車を整備する人、絵を描く人、他人を笑わせる人…さまざまな社会的分業に支えられて、はじめて自分の生活が成り立ち、なおかつ自分も分業の一部を担うことによって、現代では貨幣という形で生活のための報酬を受け取っている。

 

人間はいつの間にか、利己的な生き方だけでは行き詰まるような大規模な社会を作り上げた。このような大きな社会は、運営のための専従スタッフを要求する。社会の進むべき方向性を見定め、その方向を目指して社会全体の動きを規制する…いわば社会という船の乗組員である。そのような社会全体の管理業務に携わっているのが、本来の意味におけるエリートであり、その役割を果たすための範囲で、かれらは他者から権力を委ねられるのである。

だからこそ、本来、エリートの関心は全体最適の実現にあり、個々人の利益を最大化することにはないはずなのである。が、エリートも人間であり、動物であるから、社会を操縦するためのコクピットについた途端に、私利私欲を最大限に実現しようとする者が、排除しても排除しても、繰り返し出てくるのである。これが「高学歴バカ」である。

 

加えて、日本人が特に既得権益の維持に熱心な民族なのではないか…という意見も、Q氏は抱いている。ご存じの通り、日本は平地が少なく、耕作可能な土地面積が小さい。日本中を旅してご覧。山の中にぽつんと平地、また山の中にぽつんと平地…というのが日本という国の姿だ、というのがよく分かる。

この国で農業経営をして一族郎党を養うとなると、それなりの面積の土地を手に入れなければならず、土地の所有権争いが激しくなるのは必然である。ここでも歴史を見れば分かるであろう。日本は昔から土地所有権に関する争いが多く、各時代の政府が最も苦慮したのが、土地所有権裁判の効率的な運営であった。

 

この「土地の狭さ」が、特に既得権益にしがみつく日本人の性格を作り上げてきた、大きな原因ではないかとQ氏は考えている。だから、日本では陰湿な利己主義がまかり通るんだよな…と絶望的な気分にもなるが、社会の悪い点とその原因が分かれば、対策も立てやすくなるだろう。

「学歴」からハナシが広がっているが、世間話シリーズの一環として、まだまだ断続的に続く。