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勉強法武者修行17──7回読み勉強法(17):4回目の終わりと、暗記について

7回読み勉強法4回目(平読み1回目)の終わりが近づいた。

残るは第4部「自然との共生」のみで、ここは地学現象と災害との関係である。防災知識など、地学の知識を生活に活かしましょう…的コーナーである。

わたくしQ氏を含むわれわれの生活には非常に重要なのだが、試験対策としては二の次的分野でもあろう。

そこで、とにかく速くイッキ読みして片づけることにする。

日曜日なので、午前中に最寄りのマクドナルドに籠もって読みふけった。

 

第4部 自然との共生  計43ページ(本文以外の見出し・見返し等含む)

 第1節 地球環境と人類

 第2節 地震災害・火山災害

 第3節 気象災害

 第4節 災害と社会

 第5節 人間生活と地球環境の変化

 ⇒ 所要時間1時間17分23秒 0.56ページ/分

 

現代社会において、地学現象に伴う災害や環境変化が人間の生活にどのような影響を与えるのか。また、われわれ人間はその影響をどのように評価し、それにどう対応したらよいのか…みたいな話である。

地学を学んで実際に役に立つのはここであるが、考えて理解し、筋道立てて覚えなければならないような理論部分は、ほとんどない。現代社の教科書のような内容で、この部分も非常に文系的感覚で学べてしまう。

試験対策ということならば、用語を覚えていけばいいというような箇所であろう。緊急地震速報の仕組みや地震による液状化現象の原因、エルニーニョ現象ラニーニャ現象と気候の関係などは、復習も含めた理論面の理解が必要である。

ま、でも、こんな感じでしょう…という部分である。読むスピードも2分で1ページ程度と、他のセクションに比べて快調である。あっけなく読了。

 

さて、これで晴れて4回目が終わったので、すかさず5回目に入りたいのだが、その前に考えたことをひとつ。

 

どんな「勉強」にも丸暗記はつきもので、暗記しなければならない項目は各教科にどうしても出てくる。暗記が苦手だ、という人は多く(特に数学が得意で好きな生徒さんに多い。これは小学校から顕著な傾向なので、大脳のリソース配分の問題なのだろうと思う)、なぜ、そんな創造性のカケラもない勉強を強いられるのだろう…と嫌気が差している受験生諸君も多いだろう。

 

そういう受験生に対してはQ氏も同情するのだが、暗記が必要な項目というのは、職人さんで言えば「よく使う道具」みたいな知識なので、いざという時にパッと出せることが何より必要なのである。ある分野を習得しようとしたら、逃げられないのだ。

そして記憶が単純な脳の作用ではなく、身体的なベースをもつ現象だということを理解すれば、一定分量の「道具的知識」を、身体に刷り込むようにして覚えておく必要性にも納得できる。

仕方ないのだ。必要最低限の知識は覚えるしかない。

 

だが、大多数の「暗記項目」は、その項目が出てくる現象の仕組みなどを筋道立てて理解する(そう意識しているかどうかは別として、理論的に把握する)ことで、暗記が苦手だという受験生も、スッと覚えられるようである。

要はストーリー化するということである。

 

Q氏は以前より、歴史の授業をする際に、学生時代に好きだった落語を大いに参照して、「仕方噺」を取り入れていた。豊臣秀吉の小田原攻め…などをただ知識として伝達するのではなく、豊臣秀吉になりきって、駆けつけた伊達政宗と会話するのである。

「よく来た…政宗。近う、近う。」とかやる。

この辺は落語講談浪曲が好きだった(諸君は「浪曲ってなに?」とか言うだろう。昭和は遠くなりにけり)ことが大いに幸いしている。これをやると説明に時間が必要になってしまうが、ピンポイントで使うことで、「歴史が目に見えるように分かる」などと、受講生諸君からの評判も良かった。

こうして授業をすると、受講生諸君の日本史Bの成績はおおむね非常に良かったのだが、それは当たり前の話で、歴史をストーリーとして理解できているからであろう。

 

暗記項目の大部分は、こうして学習内容をストーリー化することでうまくこなせるのだが、最後に残るのが「偶然的で無意味な事項の羅列の記憶」である。日常的には、電話番号や住所、郵便番号、自動車ナンバーの記憶などである。

これを覚えるために、仕方なく用いられているのが語呂合わせだ。

日本語は語呂合わせが異様にやりやすい言語で、日本人はこういう羅列的事項の記憶には非常に長けている民族ではないかと思う。日本語を使えば、およそどんな羅列的事項でも、語呂合わせにできる。

 

白河上皇院政開始は1086年だが、これは「父(10)さんやろう(86)院政」がよさそうだ。院政天皇のお父さんがやるので、語呂合わせの内容が事項の内容にぴったり一致している。誰が作ったのか知らないが、名作語呂合わせである。「父さん」を「13」と間違える危険を冒してでも、この語呂合わせにこだわる価値はある。「とうとうやるぞ院政を」では事項内容との不一致が生じるし、何より、あまり面白くない。

1300年代は室町時代だから、ちゃんと勉強していれば時代のズレに気づき、院政開始が1386年にならないことは分かる。

Q氏は、学生時代の下宿の先輩のご実家の電話番号をいまだに覚えているが、それはその電話番号が、みごとに下ネタ的な語呂合わせが可能な番号だったからである。

 

こういう風に、「ストーリー化ができないため、語呂合わせに訴えてでも、ただ覚えるしかない事項」がいちばん多い科目が社会科、次が理科である。だから、数学が得意なのに理科が不得意、という人が一定割合でいるのもうなずける。

そういう人に限って、語呂合わせを馬鹿にしており、そんな馬鹿なことを覚えてまで記憶する必要はないんではないか…というような感想を持っているらしい。

よくこんな珍妙な語呂合わせを作ったなあ…というような、先人の工夫を楽しむ心境は必要なのだが、そういう「無駄」「迂回」が嫌いな人というのが、語呂合わせに積極的になれず、従っていつまで経っても「棒暗記」事項を覚えられないようだ。

語呂合わせについては、すべてを馬鹿にすることもせず、要所要所で面白くて重要なものだけ使う…というような気持ちでいいと思う。

 

理科では、昔から特に化学に棒暗記が多かったが、化学には個別的・例外的事項や複合的要因によって決まる事柄が多すぎ、けっきょく暗記でしのぐしかなくなるわけだろう。

昨今の国レベルの教育方針として、機械的な暗記によらないと解答できないような試験問題は、あらゆる教育段階で出題されなくなっている。よい傾向だ。

が、化学であれば代表的な暗記項目であった炎色反応があまり出題されなくなっているという話は聞くが、金属のイオン化列は、いまだに覚えていないと何かと不便であろう。

だからこそ、

「貸そうかな、まあ当てにするな、ひどすぎる借金」

という語呂合わせが出てくる。これも名作語呂合わせのひとつだと思う。

 

さて地学だが、やはり語呂合わせは必要。特に造岩鉱物石英、長石、黒雲母、角閃石、輝石、かんらん石)火成岩は覚えるしかないし、地質年代示準化石の組み合わせなどが、ちゃんと覚えるなら要暗記項目だろう。

 

造岩鉱物については、昔から、

「咳石英した長さん(長石)、運(黒雲母)は隠せん角閃石、観覧席(かんらん石)へ奇跡(輝石)のホームラン」

という語呂合わせがあるらしいが、これはモロに昭和な語呂合わせだから、いまの受験生には分かるのか。「長さん」というのは「ミスター・ジャイアンツ」こと長嶋茂雄のことである。「巨人軍は永遠に不滅です」の言葉とともに長嶋が引退したのは、Q氏も覚えていないくらい子供の頃だぞ。

 

地学基礎レベルでは暗記しなくてもまだ大丈夫だとは思うのだが、古生代地質年代が多少覚えにくい。古い方からカンブリア紀オルドビス紀シルル紀デボン紀石炭紀ペルム紀二畳紀)」である。Q氏が恐竜大好き少年だった頃には、ペルム紀ではなく二畳紀の表記が多かったような気がする。

これが覚えにくいので、Q氏は即席で語呂合わせを作った。

「古い顔知って、関さんひるむ」

「関さん」という固有名詞が苦しいのだが、関さんが、会いたくない昔の知人に会ってビクッとしている…というような絵を思い浮かべるわけである。関さんに、どういう人生のドラマがあるのか。借金取りか。

「古い古生代カンブリア紀オルドビス紀しっシルル紀(濁点がないが、デボン紀、関さん石炭紀ひるむ(ちょい苦しいが、ペルム紀

 

こういう風に「語呂合わせがなければ自分で作る」という気概も必要だ。よくできた語呂合わせを独り占めせず、なるべく多くの人と共有することも必要だろう。よい語呂合わせをライバルに知られたからといって、大学受験の合否を左右するようなリードをされることはない。その辺は寛容になって、オープンソースの考え方で行った方がいい気がする。

 

では、次回より5回目に突入する。