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人工的に雨を降らせるテクノロジー(化学のお話)

人口降雨の技術

先日大学受験の化学の指導をしていたらヨウ化銀についての問題を見かけました。

ここで軽く復習です。

ハロゲン化銀については主に4種類学習しますね。

 

フッ化銀(AgF) 塩化銀(AgCl) 臭化銀(AgBr) ヨウ化銀(AgI)

 

この4つです。

ハロゲン銀で重要な性質と言えば、感光性もそうですが、特に「水溶性」についてでしょう。

フッ化銀だけ水に溶け(フッ素原子の電気陰性度が大きいためイオン結合性が高い)、

塩化銀・臭化銀・ヨウ化銀水に溶けない(ヨウ化銀は極性が最小特に溶けない)

ただし、塩化銀と臭化銀過剰のアンモニアには錯イオンを生成して溶けヨウ化銀アンモニア水にも溶けずチオ硫酸ナトリウムには錯イオンを生成して溶ける

溶解のイオン反応式もしっかりと書けるようにしましょう。

 

 

さて、ここで出てきたヨウ化銀についてですが、結晶構造としては氷の結晶に非常に似ています

このことから、人工的に雨を降らせる「人口降雨」のテクノロジーに応用されています。

ここで人工降雨の仕組みについて簡単に説明いたします。

まず雨雲の中小型ロケットなどを用いてヨウ化銀(またはドライアイス)を散布します。

すると、そのヨウ化銀(ドライアイス)の結晶が「種」となって氷粒が成長し、すぐに重力により落ち始め高度を下げるに従い温度上昇により水滴(雨粒)に変わり、地上に降り注ぐというわけです。

こうして雨雲を人工的に消し去る。この手法を「シーディング(クラウドシーディング)」といい、実は60年以上前から行われている歴史ある技術です。

 

近年のエピソードとしては、北京オリンピックの開会式を晴天下で開催するための作戦としてこの技術が用いられたというものが有名です。

 

当時の「開催日時」の北京の天気予報はなんと雷雨。

世紀の一大イベントをベストコンディションで執り行うべく、すかさず作戦が実行されました。

開会式前日深夜、北京のはるか上空の雷雲に向けてヨウ化銀を散布

するとたちまち雨がものすごい勢いで降り始めました。

そして開会式当日の朝・・・雨雲は見事に消え去り、快晴の青空の下開会式は盛大に行われました

世紀のミッションは目に見える形で成功したのです。

 

ところで、日本においては実験自体は幾度も行われているみたいですが、この技術の歴史の長さの割にあまり目立った「実績」がありません

やはり、ある程度の規模でやるには「軍事力」とかも必要になってくるんでしょうかね。

 

今日のお話はここまでとします。

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