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共通テスト国語2023 (13)──漢文①_本文の概要1

トルコ・シリア地震地震列島日本では他人事ではない。われわれの日常はつねに奇跡のようなバランスの上にある。

さて、いつまでも共通テストの解説とばかりもいかない。来年の受験生には今年の問題分析を活用してもらうとして、共通テスト2023国語は、残った第4問(漢文)を検討して終わりにしよう。

共通テスト分析のあとは、難関国立2次で国語を使う医学部受験生に対し、国語の傾向分析を特集する予定である。題して「〇〇大には国語で入れ!」シリーズ。お楽しみに。

 

漢文の全体講評だが、全体によくできた問題と評価できる。漢文は一種の外国語試験であり、内容を中立的に問いやすいためか、旧センター時代から、大問4つの中でいちばん論理的に解ける良問が多かった。これは漢文の本質によることだから、今後も同じ傾向は続くだろう。共通テスト国語では、やはり漢文は点を取りたい。

出題文は2種類で、中唐の詩人・白居易(誰だ、「…のこった! のこった!」とか言ってるのは。廊下でシコを踏んでなさい!)が自ら作成した「試験の予想問題」「模擬答案」である。出題としては面白い趣向だが、今回の中味はセンター時代の漢文とあまり変わらない。

 

白居易(白楽天)はいわずと知れた唐詩の大家。日本でも『白氏文集(はくしもんじふ)が平安貴族の必須教養とされたのは、古文のあちこちに出てくるのでよく分かる。

わたくしQ氏も今回調べて初めて知ったのだが、日本の貴族社会で白居易ブーム」が巻き起こった当時、当のご本人である白居易唐でバリバリご存命であり、日本での人気を自ら聞きつけていたという。昔で言えばビートルズとか、今で言えばBTSとかに当たる人気であろうか。世が世なら、東京ドームで初の来日公演とか。ちょっと親しみが湧きますね。

もちろん、死後も唐詩のスタンダードとして、日本でもいまだに漢詩の授業で教材とされる。

 

さて、では漢文の問題を検討しよう。

漢文は、

〇まず、返り点に正確に従って訓読すること

が一番大切である。規則を覚えれば誰にでもできることであるから、正確にできるようにしておきたい。基本中の基本だが、こういう「ぞうきんがけ」「素振り」みたいな基本は大切である。

以下、本文を書き下し文に直したものを掲載する。漢字は適宜ひらがなに改めた。【模擬答案】の途中から白文のままの箇所があり、設問になっている。

 

【予想問題】

問ふ、古(いにしへ)より以来、君たる者その賢を求むるを思はざるはなく、賢なる者その用を効(いた)すを思はざるはなし。然(しか)れども両(ふた)つながら相(あひ)(あ)はざるは、その故は何ぞ。今これを求めんと欲するに、その術はいずくに在りや。

 

【模擬答案】

臣聞く、人君たる者その賢を求むるを思はざるはなく、臣たる者その用を効すを思はざるはなしと。然り而(しか)して君は賢を求めんとして得ず、臣は用を効さんとして 由、豈不以貴賤相懸、朝野相隔、堂遠於千里、門深於九重。

臣以為、賢を求むるに術あり、方あり。方術は、各(おのおの)その族類を審(つまび)らかにし、これをして推薦せしむるのみ。近くこれを喩へに取れば、猶(な)ほ線(いと)と矢とのごときなり。線は針に因(よ)りて入り、矢は弦を待ちて発す。線矢ありと雖(いへど)も、苟(いやし)くも針弦なくんば、自ら致すを求むるも、得るべからざるなり。それ必ず族類を以てするは、蓋(けだ)し賢愚貫くことあり、善悪倫(ともがら)あり、もし類を以て求むれば、[X]以類至。これ亦(ま)た猶ほ水の湿に流れ、火の燥に就くが、自然之理也

 

「而已」「のみ」と読むとか、「者」は場合によって「は」と読めばよいとか、再読文字「猶=なほ~のごとし」副詞「蓋=けだし」の読み方や意など、基本的な「字の読み方」は短期間で復習できる事柄だから、句形とともに復習しておくべきだろう。

 

来年の受験生は、漢文の基礎知識は短時間で片付けてしまい、読解演習をたくさんやるつもりでいるとよいと思う。読解演習は、漢文の場合でも、文理問わず旧センター試験と共通テストの過去問を、30年以上分ひたすらやっていればよい。センター試験からの問題の蓄積は、もはや「宝の山」というくらい充実したストックを形成しており、国語の問題は特に解答形式以外は、読解の訓練には非常によい素材である。過去のセンター試験過去問題集」など、今やネットで投げ売りの状態だろうから、格安で買ってずっとやっていれば、化け物みたいに国語の力がつくぞ。共通テストになったからセンター時代の問題が使えないということは、国語に限ってはまったくないから安心されたい。

 

さて、上のように漢文を書き下し(読み下し)文にすることができれば、あとは古文問題と同じになる。漢文訓読調の古文を読む要領で、頭の中で現代語訳しながら読み進める。

 

Q氏には、近年「漢文が苦手だ」と訴える受験生が激増した実感がある。Q氏の受験期には「漢文は勉強しなくてもよい科目の代表」とされていたが、年を経て事情は変わってきたようだ。

「漢文が読めない理由」はいくつか考えられるが、ここでそのすべてに触れるわけにはいかないので、次回、上記の書き下し文を現代語訳しながら、共通テスト漢文問題の解法に絞って解説したい。