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2次試験に国語のある国立大学医学部

共通テスト2024の分析を細かくやったため、かなりの紙数を費やす結果となった。ここからは、前期試験を控えた国公立大学のうち、医学部に国語が出題される大学の傾向分析を駆け足でやってみたい。

 

国語の配点比重が極端に高い大学というのはないにせよ、医学部受験生に2次でも国語の試験を課すということは、2次試験形式の国語問題で初めて測れるような読解力・論理性・表現力・語彙力などを要求しているということになる。要求水準が非常に高い大学だということになり、難関国立大と呼ばれる大学が多いのは諸君もご存じではあろう。

 

医師の卵の卵にそのような国語力を求めるというのは大学の見識であり、理系科目に特化しがちな受験生から敬遠されてでも国語の試験を課すという大学の選択は、一般的に言っても、「わたくしQ氏的に」言っても、むろん評価できると思う。

文系で言えば、やはり2次試験に数学があるだけで受験生の多くは恐れをなすが、文系に分類される経済学部での学びにはもはや数学は必須だろうし、経営・法・社会科学系に数学的思考はがんらい必要だろう(日本の行政中枢において、数学をよく知らない法学部出身の財務官僚が財政政策の手綱を握っていることの矛盾はよく指摘される)。高校段階の早期に「文系・理系」を分離する制度設計になっている日本の教育制度自体、弾力性のなさを批判されても仕方がないと思う。

国語講師としてのQ氏も、市場拡大のためにより多くの理系学部で2次試験に国語が導入されることを強く推奨したいが(たとえば俳句を詠んでもらうとか──笑)、まあそれは冗談として、

 

〇2次試験に国語が課される理系学部では、やはり「国語に強い理系」が有利

 

ということは、指導経験からもはっきり言えると思う。配点は異常には高くないにせよ、他科目で失点した分を、国語での「貯金」が埋めてくれる──すなわち、国語が得点バッファーの役割をしてくれることが大いに期待できるからだ。

 

また、2次に国語が課されるような難関大学は、そもそも同学年の中でも特に知的レベルが高い層が受験する。知的レベルが高ければ、中には言語能力が発達した受験生が多い。だからこそ、2次試験に国語を課しても(文句を言いながらも)ある程度ついてくる受験生が多く、いわば国語はある程度できて当たり前という「予選」の役割を果たし、極端に国語力が低い受験生はそれだけで予選から落伍してしまう──という背景も考えられる。

 

また、すべての大学について統計をとったわけではないが、同じ言語能力を試す科目として、英語の試験はかなりの場合、国語よりハッキリと「予選」の役割を担っていると見ることができると思う。

帰国子女である等の有利な条件に恵まれない限り、日本語で育って途中から英語を学び始めた人の英語力はつねに似たり寄ったりであり、その中に極端な英語力に恵まれた人と、極端に英語が苦手な人がたまにいることを反映してか、英語の得点は標準偏差が国語より大きく、数学より小さい正規分布(偏差値でおなじみのつりがね型の曲線)になるようだ。

そういう英語の性質は「極端にできない人をふり落とし、ほどほどにやっている以上の人は合格させる」のに都合がよいのかもしれない。現に、英語の成績は概して勉強の蓄積量を反映するから、共通テストにせよ個別試験にせよ、英語ができていない受験生はそもそも「勉強していない」可能性が非常に高いのである。

 

しかし、個々の受験生の英語と国語の成績はあまり強くは相関しないし、必要とされる能力は異なるものと推測される。英語は応用的な能力を大きく必要とするが、根源的な思考力・論理性はあまりなくても、一定レベルまでは到達してしまうところがある。だから、英語力をやたらに振り回す人に思考力が非常に浅い人が多く交じっていたりして、いわゆる「語学バカ」問題が発生するのである。現にQ氏が指導していても、英語はやたらに得意なのに論理的思考力や抽象能力がなく、それらを国語並みに要求する難関大の英語試験になると、まったく対応できなくなる受験生は多い。

 

だからQ氏の乏しい知見からすると、やはり英語ができただけでは「ものを考えることができる人かどうか」はあまり分からないというのが正直なところであり、言語による思考力を試すには、どうしても国語の試験が必要になってくる。

多くの私立大は入試のハードルを下げるために国語試験を捨てて軽量化を果たし(それはそれで意味のある選択なので、Q氏はそのような私大の入試傾向を批判するつもりはない。むしろ、すべての大学理系学部の個別試験に国語があったら、極端な話、0点やひとケタ台が続出し、試験に必要とされる「弁別力」がなくなってしまう。だから、国語を課さない大学があるのはよいのである)、ほとんどの国公立大学では国語力は択一式の共通テストで試すこととし、医学部の場合は全国で4校のみが、2次でも国語を課すという重量級入試を実施しているのである。それでも、山形大と名古屋大の2校はさすがに現代文のみにとどめ、古文を課す大学は東大と京大のみ、漢文を課す大学は東大のみ(京大も他の大問に折り込むことがある)となっている。

 

なぜ2次試験で国語を課すのか。遠回りのようだが、そういう「当たり前のこと」から問うことで、見えてくるものがあるとQ氏は信じる。ちょっと前置きめいていてじれったく感じられるかもしれないが、次回にかけて、まず「医学部2次の国語試験にどういう態度で臨むか」を確認しておこう。