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国語記述問題の調理法①──読めていれば怖くない・山形大学2022



わたくしQ氏の個人的事情で更新リズムが乱れてしまった。随時ストック原稿を作りながら更新し続けていたのだが、ここのところハードな内容が多く、ストックがついに底をついたのも大きい(タネ明かし)。アニメ番組の放映後半で作画が間に合わなくなっているケースみたい。

では残った期間、2次試験で国語を課す国立大学(山形大・東京大・名古屋大・京都大)の国語試験問題を考えてみよう。できることは限られているが、これら大学医学部受験生諸君の参考に少しでもしていただければ幸いである。

 

前回「基礎的な問題を手堅く解答するより、ライバルが敬遠する難易度の高い問題に手を出せ」と申し上げたが、それは、よくある「落ちるパターン」である「基礎をおろそかにして、応用問題ばかりやれ」と言っているわけではないことに注意してもらいたい。

いわゆる早慶上智などの有名私大文系に不合格になる受験生は、英語や地歴で「基礎レベルが9割以上できる状態」を実現する前に、無用な「難問奇問対策」ばかりやって自滅する。理系学部、医学部でも事情は同じだろう。基礎をおろそかにして難問の演習ばかりやっている学生は、まず100%不合格の憂き目を見る。

 

が、国語の「択一式」と「記述式」との関係は、必ずしも「基礎レベル」と「発展レベル」の関係ではないのである。国語では、出題された文章をすみずみまで的確に読み込めるかどうかがすべてであり、択一式も記述式も、読み取った内容を前提としているのは一緒であって、ただ解答形式が異なっているに過ぎない基礎レベルと発展レベルの差は、出題される文章そのものの難易度の差に当たる

ただ、記述式は「読み取る」だけでなく「組み立てる」能力が要求される分、めんどうくさくて応用レベルと分類されるというだけであって、「的確に読み取る」という基礎的作業ができさえすれば択一式はすべて解けるわけではないし、国語が苦手だからといって記述式が必ず書けないわけではない。

 

だから、文章が読み取れさえすれば、記述式に先に手を出すというのは「めんどくさい課題から先にやる」ことに当たり、「基礎を無視して応用ばかりに手を出す」という、ふつう避けるべきとされるやり方には当たらないのである。

「めんどくさいものから先に片づける」は仕事の進め方としては鉄則とも言える。Q氏が国語の記述問題を是が非でもやれ、というのは、そういう意味と解釈していただきたい。

 

さて、ではさっそく東から、山形大学医学部の国語問題をモデルに、傾向分析と、記述問題の解法を見てみよう。

 

山形大の場合、医学部前期は現代文のみ大問2題。(一)は評論で、哲学系の文章が多いのが特徴である。論理的文章の読解力を試す評論問題の出題文の典型は哲学系の文章と言えるから、正統派の出題方針と言えるだろう。大学の見識が窺える。が、内容が近年の共通テスト以上に難しいわけではない。

(二)は小説で、理系2次に小説を出題する稀有な大学である。内容も正統派のチョイスで、近代作家も出題される。大学入試国語としてはバランスがよく、教養も含めた正統派の国語力を問おうとする出題意図が明確だが、読む方は共通テストとさほど変わらぬ感覚で行ける。

 

どちらの問題においても、出題文のレベルは共通テスト以上ではない。共通テスト本文が読める人にとって、それほど怖い試験ではないと考えてよいだろうが、これは全国国公立大学共通の傾向である。共通テストレベルの現代文をきちんと読みこなせることが、いかに大切であるかが分かるであろう。あとは「めんどくさい」記述式問題に対応できればよいのである。

しかし、共通テスト国語は「読めていなくても、とりあえず解答はできる」形式であるから、もともと共通テストが全然読めていないような受験生は、国公立2次の国語にはまったく歯が立たないはずである。

 

山形大医学部の場合、出題文の分量は多い。毎年完全に一定はしていないが、評論・小説共に4,000~7,000字程度あり、共通テスト現代文の本文より若干長いのが普通である。下手をすると共通テストの5割増しくらいになる。大盛ラーメンみたいなものか。一定速度以上で読まないと読み終わらないはずだし、記述問題があるから、問題数はさほど多くない割に、問題処理能力はそこそこ高度なものを要求するだろう。

 

ここ3年間では、前期の国語は(一)(二)ともに、それぞれ記述問題2~3題を含む。2題の時もあるし3題の時もあるため、記述の出題数まで織り込んだ詳細すぎる傾向分析にはあまり意味がない。記述の字数は100字前後であることが多いが、それも記述すべき事柄に応じて決められており、完全に一定はしていない。だからあまり小手先の技術習得に走らず、あくまでも文章の勘どころを読むことに精力を使いたい。

評論は文中に出てくる概念の説明テーマの要約、小説は心情やその理由説明を書かせるわけだが、評論にしても小説にしても、記述問題で問うべき内容は真っ先にそれであるのは、どの大学でも同じこと。だからまず、集中して本文を読み取ることに努めよう。

(小説の心情問題について。心情そのものはさまざまな幅を持ち、Q氏が常に述べているようにある程度広い解釈が可能なものであるから、より論理的に解答できる、心情や言動の「理由」を問う問題の方が、国語の問題としては客観的で適切であろう。山形大の出題も現にそうなっている。)

 

ここでは今のところ最新の2022年(令和4年度)(一)の評論(若林幹夫「なめらかで均質な空間が顕在化し始めた時代」)を取り上げる。問題はネットで検索すれば手に入るから、各自参照されたい。山形大志望者は赤本等で持ってるよね。

 

問5問8が記述。いずれも100字以内である。問5は本文中の重要概念を踏まえた説明を要求し、問8は本文のテーマをストレートに問うている。これら2題ができる人とできない人とでは、記述力うんぬん以前に読解力が異なるはずである。では、次回、本文が読めていることを前提に、答案のまとめ方を解説してみよう。