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T大生はリビングで勉強している?

皆さんは覚えているかどうか、一時期「T大生はリビングで勉強している」という説が流布し、リビングのテーブルでの勉強はかなり一般化したようだ。

何でもかんでも「T大生は…」と始める昨今の風潮は、わたくしQ氏にはかなり疑問だが(そもそも、T大生が見世物みたいで気の毒である)、リビングでの勉強は確かに「すぐに勉強にとりかかれる」物理的な工夫のひとつと言えるだろう。まず勉強部屋に行かなければならないのでは、そのために歩く数メートルの間に気力がなえるし、専用の勉強部屋は散らかりやすく、人によってはカオスになりがちだ。

昔の、そのまたさらに昔は個人の勉強部屋などなく、学校に通う子供はリビングならぬ「茶の間」でミカン箱(木箱の時代ね。段ボール箱ではなく)を机代わりに勉強していたのだから、リビングでの勉強は先祖返りとも言えるかもしれない。

 

リビングでの勉強には、

「雑音への耐性ができ、集中力のコントロールがうまくなる」

「リビングで過ごす家族との一体感から、安心して勉強できる」

「家族に監視してもらうことで、怠け対策になる」

「休憩⇔勉強の切り替え時のタイムラグが小さい」

などの効果も考えられる。

家族がテレビなど見ながら自然に過ごしているかたわらで勉強するわけだから、よほどの集中力がないと、気が散ってしまって勉強にならないだろう。成績優秀者はリビングで勉強している率が高いという説が本当ならば、成績優秀者ならではの集中力の高さから、リビングの環境ノイズが気にならないのかもしれない。

また、リビングで勉強するには家族の仲が比較的よいことが条件となるだろうから、リビングで勉強できるということは、心理的安定感があり、無言のうちに受験生をサポートできるご家庭なのだ…ということかもしれない。

 

Q氏も、自分がリビング勉強派であるせいもあり、担当した生徒さんの「リビング勉強率」をざっと調べてみたことがある。

統計ベースには乗らないものの、確かに成績優秀者のリビング勉強率は高いように思われた。リビングで勉強しているから成績がよい、ではなく、成績のよい人がリビングで勉強しているというケースを、かなりひんぱんに見聞きする。

ストレスを感じながら勉強部屋で缶詰めになっている受験生諸君。この際だから、リビング勉強に切り替えてみてはどうか。何かが変わるかもよ。

 

さらに物理的ハードルの話。

やや古い話だが、Q氏は受験生時代、あるいは成人してからも、習得の必要からみずから英語を重点的に学んでいた時代は、古本で紙の英語辞典を安く、何冊か仕入れ、家のなかの自分がよく過ごすスペースに、すぐ手が届くように点々と置いておいた。

 

現在は紙辞書をまったく使わない人もいそうだが、紙辞書は慣れれば電子辞書に負けず劣らず速く引ける。「紙辞書はめんどくさい」とか言っている人は、昭和脳のQ氏から見れば、紙辞書を引くという「かつて、少しでも勉強をする人なら当たり前だった」基礎訓練が足りていないように思えてしまう。

また、紙辞書には「通覧性」があり、この通覧性が学習に大きな効果をもたらすという話もある。紙辞書では、引く過程で、同じページに載っている目当ての単語以外の語句が目に入り、電子辞書より記憶に残りやすいという研究結果があるようだ。

そのスグレモノである紙辞書を、ちょっと思いついた時にすぐ引ける位置に置いておけば、英単語を調べるのがあまり苦にならなくなる。いちいち本棚から取り出したり、元の位置に戻したりしなくてもよい。小型辞書を選べば、紙辞書の欠点である重量も、多少は気にならなくなる。

 

その調子で、トイレにも、風呂にも辞書を置いておく。辞書によって単語の解説に特色があるから、すべての場所に異なる出版社の辞書を置いておき、自然と読み比べられるようにする。

テレビや映画を見ていて意味が分からない英単語が出てくれば、ソファから手を伸ばし、すぐに紙辞書を引く。Q氏は自身の勉強の際には、そういうことをなるべく心がけた。もちろん、辞書を引くのが面倒にならないように、外箱や帯は最初から外しておく。極力「めんどくさくないよう」工夫し、まず、英単語を調べるための物理的なハードルを下げておくのである。

今の皆さんはスマホかもしれないけれど、スマホは脳によくないという説も次々出ている。スマホ依存はけっこうヤバいぞ。生涯で受験勉強の時くらいは、紙辞書を見直すとよいかもしれない。

 

物理的な工夫は、ほかにもいろいろ考えられるだろう。100円ショップで売っている、じょうぶな布製のバッグに、教科書や参考書・問題集・ノートを科目ごとに分けて入れる。化学ならば化学の袋を、英語ならば英語の袋だけを持ち出せばいいようにし、マクドナルドなどにも持って行けるようにしておく。どの袋にも個別に筆記具を入れ、外出には必ずどれかの袋を持っていくようにすれば、外出先でもすきま時間を使って、必ず何らかの科目の勉強ができる。

現役生は、学校に持っていく大きなカバンの中で、やはり中袋を使って教科書や参考書を小分けにしたり、ブックバンドでまとめて扱いやすくしたりするのもアリかもしれない。ブックバンドをいちいちほどいたり、かけ直したりするのは手間を増やすようだが、教科書や参考書をシステマティックに扱えて、いちいち探したり取り出したりする手間が省けるのなら、差し引きでプラスの結果になるかもしれない。

日本の伝統に敬意を表し、ふろしきを使って小分けにするのもよさそうだ。

 

ともあれ、まずは勉強のハードルを物理的に下げる。なるべく「めんどくさく」ないようにする。そして、取り出したものを元の場所に戻しておくことだけ心がける。少しは勉強しやすくなるのではないだろうか。

このへんで、また次回につづく。