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勉強法武者修行02──7回読んだら理解できるのか(2)

さて、わたくしQ氏も山口真由氏の提唱になる「7回読み勉強法」を知ってからというもの、受験生諸君に紹介する意味もあって、まず自分で体験してみたいと長らく思っていた。

 

ここで改めてQ氏が問わず語りに自己紹介すると、塾・予備校に恵まれない地方小都市で現在まで比較的長期間、受験生諸君に付き合ってきたために、何でも屋的にいろいろな教科や科目に手を出し、気がつくと高校で学ぶ科目は、かなりの部分について指導経験・学習経験があるという状態まで来た。別に自慢ぢゃないよ。

 

「本業」は「私文」の指導に最低限必要な国・英・歴史で、指導が最も得意なのは現代文である。が、数学の不得意な高校生相手に数ⅠAⅡBの指導も続けてきたし、地理・公民と、(そんなに高度なレベルまではカバーできないが)理科も請け負ってきた。高校までいちおう理系で、最後に文転したため、化学生物も共通一次(←歳がバレる)まで付き合ったし、理数は共通一次の点数も取った。その辺の記憶だけを頼りに、今でも理系科目は思い出し思い出ししながら、高校生や高卒生の日常の学習にお付き合いする程度のことをやっている。

 

教える仕事というのは、毎年同じことをやるので退屈する。Q氏は退屈を最も嫌う、刺激大好き多動タイプなので、退屈を紛らすため、新しい科目の指導要請があるたびに教科書と参考書を山ほど買い込んで自称「山ごもり」し、信頼関係のできている生徒さんに1年目の実験台になってもらって指導法の研究を行い、だいたい2~3年で概略は教えられるようにする…みたいなことを繰り返してきたのである。

 

教える技術(生徒さんのレベル把握や分かりやすい話し方、比喩の用い方など)は、だいたいどの教科でも同じだから、1科目を的確に教えられれば2科目めも行ける。問題は、Q氏自身が新しい指導科目の内容を理解することである。この「仕込み」には、とにかく時間がかかった。

 

気がつけば、Q氏がどうしても苦手であるために、或いは需要がないために扱っていない手つかずの科目は、物理基礎および物理、地学基礎および地学、数学Ⅲ、現代社会、ならびに情報その他の専門科目のみになった。このほかの科目は、高度な受験指導は無理であるものも含め、部分的にでも扱ったことはある。いきおい浅く広くの中途半端さになるのだが、中核となる科目はだいぶ掘り下げた手ごたえもあるし、広くやると知識の相互関連が生じてくるため、少ない科目しか指導できなかった頃に比べて、各科目の内容が逆によく分かったりする。

こうして、Q氏も「勉強法」については、はばかりながら体験からいろいろ言えそうな気がしないでもない。

 

だが、受験生諸君にとってQ氏の体験があまり役に立たないのは、Q氏が各科目の知識を、かなり時間をかけて学んでいる点である。

Q氏くらい時間をかければ、誰でもある程度は科目に詳しくなれるだろうと思う。が、問題なのは、受験生諸君にはその時間がないことである。

 

そこそこのレベルまで指導できるようになるまで、今までいちばん大変だったのは日本史Bで、5年くらい日本史以外の本を読まないという、修行のような日々を続けた。入門書から専門の論文まで読みあさった。歴史の関連文献は膨大な量だから、今でも、当時買いあさった文献のすべてを読みきれてはいない。

元はと言えば、英・国の指導が長い或る生徒さんの「日本史が分かりにくいからついでに教えてほしい!」のひと言に「しょうがねえなあ」と応える気になったのが運の尽きで、気がつけばもう1回大学に行った気分になるくらい、日本史にどっぷり浸って勉強したのである。古文書の解読を一からやっておらず、活字情報ばかり見てきたので、史学科卒の実力はないが。

 

それまでは、世界史は好きだったものの、「ケチくさい島国の歴史」である日本史は大嫌いで、戦国や幕末の歴史に関するオタク的な話題を忌み嫌い、NHK大河ドラマも一切見たことがなかった。大学受験に日本史は使ったものの、内容はもう完全に忘れており、縄文時代打製石器のみだった…などと誤解し、中学社会科で間違ったことを教えては、訂正したりしていたのである。

 

「山ごもり体験」ののちは、日本史に関してはそれなりに見識が得られた気がし、独自の意見を開陳できるようになったし、歴史的思考方法がかなり身についた実感があった。中年のオッサンにしては、すごい進歩だったのである。これは社会人の「学び直し」の一例だと思うが、とにかく人生の中でも非常に有意義な体験だった。今では、楽しみながらマイペースで歴史と付き合っている。もちろん大学入試の日本史は、どの大学にも対応できる。

もともと古文などは講師として読んでいるから、古文の内容と歴史とがちゃんと頭の中でリンクし、古文を読んだり教えたりするのも、国語オンリーの講師だった頃より楽しくなった。

 

が、Q氏がいくら「時間をかけて広く学び、知識の関連づけを重視せよ」などと言ったって、そのやり方は多くの受験生には適用できない。受験生諸君の場合、1年程度で大学受験に対応できる実力をつけなければならないのだから。

試験には期限がある。納期のある仕事なのである。だからこそ、やはり「司法試験一発合格」みたいな人の「煮詰めた」勉強ノウハウに学ぶ必要性が出てくるのである。

今日は寄り道したが、まだまだ「7回読み勉強法」の奥義に体当たりで迫っていこう。