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大学入試はどこへ行くのか(1)

受験生の皆さん、お正月も追い込みがんばってますか。わたくしQ氏も、正月休まずにブログを更新するくらいしか皆さんにお付き合いすることができないため、今日は新春特別企画とまいります。

 

旧年中、元人気子役の鈴木福(Q氏はかれを「福くん」と呼びたい年齢のおっさんだが、もう立派な成人ですからね)がAO入試で「有名大学」に合格した(どこかはすぐ分かってしまいます)という記事を目にした。

Q氏はテレビを見ていないため分からないのだが、最近の鈴木福氏は報道番組の高校生コメンテーターを務めるなど、子役時代以上にマルチで知的な活躍を見せているという。子役として人気を分かち合った芦田愛菜(こちらもQ氏は「愛菜ちゃん」と呼びたいが、レディーに対してもう失礼ですね)とともに、かつて定説だった「子役は大成しない」のジンクスをやすやすと破り、公私ともに充実した生活を送っている様子なのはめでたい。このお2人には勝ち組感というかセレブ感というか、そういう眩しさが感じられますね。

 

鈴木福氏や芦田愛菜氏が有名大学に入った、というニュースは、大方の人にとって「すごいね! よかったね。大学生になってもますますがんばってね!」という話でしかないから、まったく問題がない。「Q氏的にも」ノープロブレムである。

 

が、Q氏が同時に注目したのは、同じ記事中の「今や大学入試は推薦・AOが主流」というレポートであった(正確には、現在はそれぞれ要件を厳格化し、「学校推薦型選抜」「総合型選抜」という)。

 

この件に関しては、実際に大学受験準備をしている受験生の方が、いろいろ言いたいことを心に抱いていることだろう。また、大学医学部や国公立大学はまだまだ一般選抜入試が主流だから、推薦・AO(以下もこの旧称を使う)は「自分には最初から関係のない話だ」と、どこ吹く風で過ごせている受験生も多くいると思う。

 

学校推薦制度自体は昔からあり、推薦を受けて学力試験を免除されるのは、高校平時の学業でずば抜けて優秀な成績を収めた生徒の特権であった。推薦枠自体も非常に小さく、推薦入学生は「学業における特権階級」というような位置づけであり、その他大勢の受験生は「推薦枠に入れないから」一般入試の厳しい競争に参入せざるを得なかったのである。ずば抜けて優秀な実績を挙げられていない「凡人」は、努力して入試の狭き門を突破せよ、という制度だったわけだ。

 

が、昨今主流となりつつある一般入試以外の選抜制度は、昔の推薦入試とは若干趣を異にする。

推薦入試には、ご存じの通り、大学側が割り当てた推薦枠を高校内部でさらに生徒に割り当てる「指定校推薦」と、学校推薦を条件に、受験生がより自由に大学を選択した上で自発的に出願できる公募推薦がある。これらは学校推薦が必要であるという点で従来の推薦入試に近く、評定平均をはじめとして高校の「お墨付き」があるという点で、いちおう学力等も保証されるというタテマエにはなっている。書類選考以外には小論文や面接、プレゼンテーションなどが課される場合がほとんどだが、共通テストの成績等の学力保証を求めてくる大学もある。

Q氏の印象では、指定校推薦の資格を得られる受験者には、「その高校の中では」旧推薦制度に近い「選り抜き感」がまだあるが、公募推薦となるとかなり審査が「ユルく」なってくる感覚である。あくまで印象であるから、厳密な検証を経ていない意見であることをご承知願いたい。

 

また、入試の通過条件の「ユルさ」も大学により、高校によるのはもちろんのことである。しかし、推薦入試であっても公募推薦の場合は、生徒が「受けたい」と言えば、高校側は、学力不足等を理由に強固に推薦を拒むということは、なかなかしないように見受けられる。学力の足りない生徒の要求に対し、けっきょく「根負け」して推薦書を出しても、その生徒がぶじに合格した際、高校の進学実績に算入できるというわけであろう。それに、普段はろくに勉強しない生徒からでも、目を輝かせて「人生の目標を見つけました! この大学で学びたいんです!」とか、うまいことを言いながら押しの一手で来られれば、優しい先生方は「じゃあ、心を入れ替えてがんばれよ!」と、推薦書の手配に走ってくれることもあるようだ。また、進学実績の伸び悩む高校では、「成績の悪い生徒をあえて推薦で大学に押し込む」という意図的操作も行われていると聞く。

が、これもすべて高校により、受験大学による。公募推薦は医学部でも実施されているが、もちろん要件は厳しい。公募推薦は指定校推薦と違って「落ちる試験」であるから、実力不足の受験生が見栄で出願した場合、「正当に」不合格となるケースはもちろん数多く生じる。

 

原則として一般入試を選択する受験生を指導することの多い(最近は推薦・AO対策の依頼も増えている)Q氏の耳には、このような推薦・AO入試への不満が多く聞こえてくる。いわく、不公平。日本史でやる、明治初期の不平士族みたいである。

Q氏は西郷隆盛江藤新平みたいな立場で、「不平一般受験生」たちの文句に耳を傾け、かれらのガス抜きのために説得を日々試みているが、かれらの不満に一理も二理もあると思うケースは確かに多い。多くは「実力不足の学生の上位校への合格」ケースである。

 

「推薦・AO入学の比率増加」が過渡的状況にあるこんにち、各所にひずみが発生していることは間違いなさそうだ。制度の趣旨自体が誤っているのかそうでないのかは、まだまだ分からないが。

Q氏もふだん場当たり的に対応しているだけで、問題全体を詳細に検討したことがないため、この問題、どこに行くのか、自信を持って予言できない。

そのうち明治の「不平士族の乱」みたいに、不満を抱いた一般受験生が腹いせの事件を起こす…とかは、不穏なビジョンではあるが、ないことを祈る。

 

この問題は大きいので、1~2回では論じきれない。今後も折に触れて考察したいが、共通テスト国語の話題に戻る前に、次回も「推薦・AO問題」に触れよう。