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共通テスト国語2023 (16)──漢文④_選択肢の検討2


共通テスト漢文2023
の選択肢の検討、つづきである。ブログの更新が変則的になってしまったですゥ(←タラちゃん調で)。

 

問4。これも非常に平易な問題である。本文中の比喩「線(いと)「矢」とがそれぞれ何を表しているかについての問いだが、漢文が難しい年度というものがあるとすると、それは本文に「分かりにくい比喩」が用いられている場合であることが多い。漢文では君主や支配階級の心得などが比喩で語られることが多いから、比喩の内容は注意深く検討したいところである。

「線」「針」によって初めて(布地に)入っていき、「矢」「弦」(弓の弦〈つる〉)によって初めて発射されるというのだから、「線」「矢」ともに「自ラ致ス」もの、すなわち君主の役に立とうとして向こうから自発的にやってくる賢人のたとえである。そして、「線」「矢」とが似た者同士「族類」)を形づくるのではなく、「線」には「針」が、「矢」には「弦」が族類として対応しているのだということは、本文を注意して読めば読み取れるだろう。自ら役に立とうとやってくる賢人を、「針」や「弦」に当たる賢人の仲間を通して推薦させろ、というわけである。

選択肢にはほとんど迷う要素がなく、①が正解

 

問5も要領をつかめば非常に簡単で、今年の漢文は現代文の面倒くささを補うための問題間レベル調整に使われたのか、本文は普通だが問題はかなりの軽量級である。手ごころを加えすぎではないかという気さえする。普段から古文漢文セクションを先に解く訓練をしていた受験生は、今年は古文漢文の平易さに快哉の声を挙げたかもしれない。

問5は白文「[X]以類至。」の[X]の位置に何が入るかを、書き下し文付きで推測させる問題だが、文法的にはすべての選択肢がありうる「以類」「前置詞+名詞」「類を以て」「至」V「至る」だから、[X]の位置に入るのは主語副詞=連用修飾語、或いは「以類」に対する否定語である)。漢文の語順として不自然なものはないから、意味で考えればよいということになる。書き下し文の現代語訳を本文の該当部分に挿入してみて、最もよく意味が通る「必ず類を以て至ればなり(必ず同類を介してやってくるからです)」を選べばよいから、正解は③となる。

 

問6「線と針」「矢と弦」などが「似た者同士」を表しているという本文の主旨を踏まえた上で、本文最終行の比喩の意味を問う問題。これもあまり紛らわしい選択肢はなく、強いて言えばがダミーかと思われるが、ストレートに正解④を選ぶことは難しくないだろう。

 

問7は全体の趣旨に関する重要な問いだが、非常に平易で、ほとんどひねりがないため、正解④は選びやすいかと思う。本文中の比喩が何を意味しているのかいまひとつ自信が持てなかった人は、選択肢によってかえって本文の内容がはっきり分かるのではないかと思う。古文や漢文で本文の一部にどうしても疑問が残ったり、解釈に自信が持てなかったりしたときは、問題の選択肢にある現代語訳から逆算するようにして本文の該当箇所の解釈を試みるとよい場合が多い。ただ、その場合も、間違った訳を掲げている選択肢によって間違った解釈を施してしまう危険性はあるから、1文節でも怪しい部分を含んだ選択肢は不正解として容赦なく捨てることができるように、厳しい選択眼を養いたい。

 

以上で、国語担当わたくしQ氏による共通テスト2023国語の解説は終わりである。比較的細かくやったら回数を取りすぎてしまったが、特に来年の受験生に参考にしてもらえれば幸いである。

来年の問題予測などはできないし、慎むべきだが、今年は古文はまあまあ普通としても、漢文が簡単すぎた気配はある。また、やはり現代文の問題数が多すぎるという指摘が、国語担当の予備校講師陣を中心に、さっそくネットの各所でなされている。Q氏も賛同する。必ずしも悪い問題とは思わないが、やりすぎであり、毎年この分量では受験生が少しかわいそうである。

 

今の共通テスト国語の問題形式は来年2024(令和6)年限りをもって終了となり、2025年からは新学習指導要領に沿って出題形式と試験時間の変更が実施される。来年の受験生は「浪人できない」という焦りを感じるかもしれないが、制度変更の影響はすべての受験生が等しく受けるものなので、あまり気に病む必要はない。が、受験生も日本人らしく右へ倣えが大好きで、毎年似たような動きを見せやすいから、来年は「浪人忌避の受験生の安全パイ出願」が増えることは予想できそうだ。が、来年の医学部志望受験生諸君は、そのような目先の動きに惑わされず、しっかりと本筋を踏まえた勉強を続けるのがよいと思う。

 

では、皆さんお付き合いありがとうございました。