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勉強法武者修行19──7回読み勉強法(19):5回目②…内観

さて、7回読み勉強法5回目(平読み2回目)のつづきである。

5回目は割と快調なペースで進められることが分かってきたが、5回目で初めて気づいたことがあるため、前回エントリーに補足する形で、わたくしQ氏の「内観」をお伝えしたい。

 

①まず、用語は5回目でもまだ完全に覚えられない。地殻とマントルとの境界面であるモホロビチッチ不連続面(モホ面)」などは、強烈な用語なのでかえって覚えるが(「朝鮮民主主義人民共和国」を、その長さゆえに逆に覚えてしまうのと同じ)、細かい用語はかなり危ない。

プレートも日本付近は覚えたが、全部は覚えていない。地層の褶曲パターンの背斜向斜、広域変成岩である片岩片麻岩などが、いつもごっちゃになる。造岩鉱物と火成岩はリキを入れて何とか覚えたが、カリ長石「ケイ長質岩」がなかなか覚えられない。

また、大気と海洋のところは暗記の山なので、まだぜんぜんダメである。十種雲形は、名称に規則性があることは分かったが、どれがどれだかパープリン(←死語)である。しばらく空を眺め、実物の雲で「実習」して覚えるしかないか。試験に出ないことを祈るが、出たらまずい。

また、偏西風とか貿易風とかは覚えたが、「寒帯前線帯」がいつまで経っても出てこない。極高圧帯亜熱帯高圧帯熱帯収束帯はなんとか覚えた。それぞれ読んで字の如し、名前に由来があるからである。

そして、さり気なく1枚の図で説明されてしまっている海流の名前。よく出るものしか出ないのだろうと思うが、これも拷問に近い。用語を覚えることが嫌いな受験生諸君の気持ちは、本当によく分かる。

 

結局、数回読んだだけでは、まだ用語の定着までには至らない。7回読み終わってみてから、まだ自信がない用語が残っているかどうかを内観して調べ、覚えられていない用語は別途、一問一答問題集などを探してきて使うとか、自分でノートにピックアップするとかして、暗記し直さないとダメかもしれない。

Q氏は覚えること自体が嫌いというほどではなく、現役時代はむしろ得意な方だったかもしれないが、いかんせんトシだしなあ…受験生諸君には絶対に負ける自信がある。

 

②また、これには改めてびっくりしたのだが、中学で学習している用語には一切の説明がない。

が、実際問題として、中学理科の知識があやふやな高校生などは山ほどいるわけである。そういう高校生にとって、高校地学基礎の教科書が前提としているような中学理科の知識は、もう一度注釈を加えてもらいたい内容に入るのではないかと思う。

 

しかし、高校地学基礎の教科書では、中学で学習済みの内容は極端にあっさり触れられているに過ぎない。

これは不親切…と言い出すときりがないのだろうが、地震や火山活動の学習は中学1年だから、高校生によってはまったく覚えていない…という人も多いのではないかと思う。

特に、重要部分で説明が少ないことがあるため、その辺は何らかの工夫が必要ではないかと思う。教室で教師が補足することが前提とされているのだろうが、恐らくやらない教師は多数いるだろう。また、自学自習に教科書を使う場合は、下手をすると分からないままになる箇所が残る。

 

今回の地学基礎教科書では、地震の項目にそういう例が多かった。

まず震源震源周囲で岩石破壊が起こる領域)「震央(地下の震源に対応する地上の1点)については一切説明がない。これらは中学理科でやるのだが、高校生にとってはもう何年も前の話である。特に震源域の用語は説明なしに多用されているから、震源との違いがいまひとつよく分からないままになる人は多いだろう。

震央の定義は述べられていないが、図中に示されているため、何となく意味は分かる。が、図中の情報を見逃す高校生には、震央と震源の区別がつかず、震源距離を震央距離とごっちゃにしたままになる人も、絶対にいるはずである。

 

また、肝心の、PS時間(初期微動継続時間)が震源距離に比例する(大森公式)という原理がアッサリ触れられているだけで、「なぜなのか」の説明(図示も含む)がいっさいない。結局「比例するから、比例するのだ。これでいいのだ。」と丸暗記する高校生が続出するだろう。天才バカボンのパパである。

中学理科でも、初期微動継続時間が震源距離に比例するという内容を習うが、「なぜ比例するのか」は、最終的には地震波(P波、S波)の到達所要時間と到達距離を2軸とするグラフを描いて、三角形の相似を利用して説明することになる。

しかし、地震を習うのが中学1年で、三角形の相似を習うのが中学3年なのである。中1の段階では、大森公式のもととなる原理が、生徒が完全に納得できる形で説明できないのだ。

だから、中学1年生の多くは「初期微動継続時間は震源からの距離に比例する」と暗記している。当然、そんなめんどくさい、意味の分からない暗記はしない中学生が多い。

その中学生が高校生になって、地学基礎でいきなり大森公式を丸暗記するわけだから、何が何だか分からないまま、ともかく「比例するんだ」とやみくもに覚えている人が、この日本には掃いて捨てるほどいる…ということになるだろう。

このような「配当学年までの知識で説明できない」項目が生じるのはやむを得ないのだが、中学理科の地震に関するこの事項だけは、いつまで経ってもうまく解決されていないようだ。割と重要なのに。

 

「中学でやったことを覚えていない高校生は、その高校生が悪い」とでも言わんばかりの、教科書の記述のこの「厳密さ」は、場合によってはなかなか厳しい結果を、学習者にもたらすことになりそうだ。

 

こういう、教科書の味もそっけもなさを埋めるのが、本来は教室での教師の役割である。が、教師には質のばらつきがあるから、当然、その役割をうまく果たせていない教師は(残念ながらかなりの高頻度で)存在する。その現実は変えられない。

 

また、学習者も「教科書というのはそういう不親切なものだ」と予め観念して、教科書のよく分からない部分を自分で発見し、自分で埋めるアプローチを取らなければ、必ず知識の穴が残る。そして、そういうことをやらない学習者というのが、これまた大半を占める。

 

結局、勉強に差がつく要因は、「ここはまずいな」という危険予測の能力や、自ら分からないところを探して自ら潰す、能動性の有無なのだろうと痛感する。

 

さて、今回は内観でお茶を濁したが、引き続き5回目を読み進み、レポートをお送りしたい。