オンライン医学部予備校

2023年度入試で医学部(東大京大)への合格を目指す全ての受験生をサポートします。

あとが肝心(4)──つねに挑戦者になる

さて、もう共通テストの講評どころではなく、もう既に私大医学部受験が始まっている。本日から受験行脚が始まる皆さん、移動時の事故やトラブルにくれぐれもご注意ください。

怖いのは事故だけではなく、害と言えば交通機関へのカバン等の置き忘れなどの方が大きいかもしれない。受験票が入っているバッグ一式置き忘れるとか。

気持ちが上ずっているから、そういう小さいようで大きいトラブルにも気をつけて、持ち物などは指差確認し、自宅や宿泊先はなるべく早く出るようにしよう。普段は遅刻しがちな諸君も、これからの期間は1秒でも早く試験会場に着くことを考えた方がよい。

 

さて、私大一般入試や国公立2次に向けた「心得」的なオハナシの最終回である。

 

(3)なぜ判定は当てにならないのか

わたくしQ氏の指導歴では、「共通テストで大成功した人が私大一般・国公立2次で大失敗する」という例が非常によく見られた。だからまだ指導歴が浅い頃は、Q氏は受験生と一緒に旧センター試験の成功を素直に喜んでいたが、ある時期からは「センターでうまく行った」受験生を強く戒めるようになった。極端な話「あなたは不合格に一歩近づいた」ぐらいのショッキングなことを言ってでも、受験生が気を緩めないよう心がけることにした。

 

「A判定の受験生が落ちる」現象は非常によく見られるが、なぜだろうか。単なる「油断」と言えばそれまでなのだが、なぜA判定やE判定など、データによる判定を過度に信じることが危険なのか。

 

①受験生の学力は共通テスト段階ではまだ完成しておらず、国公立2次試験まで伸び続けるから、共通テストでの成功にあぐらをかいた受験生は土壇場で学力の伸びが止まり、共通テスト時の判定はより下でも、諦めずに勉強を続けた受験生の方が逆転合格する。

 

この説明は非常に説得的である。現実にそうだと思う。逆転合格の最も有力な説明である。

また、Q氏が推薦・AO入試の割合を増やしすぎることには反対なのも、受験生の学力が本当に伸びるのは共通テスト後であるという経験的事実による。この時期を勉強と無縁に過ごした人の学力がイマイチなのは、致し方ないことだ。

 

②大規模データによる判定は大手予備校等の集計によるが、共通テストに失敗した人、特に浪人生がデータを提出しない傾向があるため、元データにわずかに上方へのブレが生じる。

 

これも多少はあるかもしれない。大手予備校の自己採点データは共通テスト受験者全員のものではないし、判定は独自基準による目安である。特に浪人生は現役生ほど従順ではないため、共通テストに失敗すれば自己採点データを提出しないこともある。こうして、判定自体が元来目安に過ぎない上に、浪人生の滞留具合などによる集計誤差の影響が、多少は出るのではないかと考えられる。

どうもQ氏など指導者の「体感」よりも、大手予備校の志望校判定は、そもそも若干厳しめに出ることが多いように思う。だからQ氏は勝負に出たい受験生には、滑り止めを確保した上で、自己責任において勝負に出ることを勧めていた。

大学全入時代」を迎えて浪人生は減ったが、医学部受験ではまだまだこの「判定の下ブレ」現象も多少は見られるかもしれない。

 

③強気出願をあきらめる脱落者が次々と出て、受験当日にはメンバーが大幅に変わっている。

 

この効果も非常に大きい。世の中、不安ばかり強くて、とにかくイチかバチかの勝負に出ることを嫌う人が多いのだ。「日本人は特に不安を感じやすいDNA型を持っている」脳科学者がよく指摘している。確かに、屋外なのにいつまで経ってもマスクを外さない日本人の姿を見ていると「この人たちから『チャレンジ』という言葉は生まれないな」と絶望的になる。とにかく、何でもいいから安全パイにしがみつきたい人が多いのだ。

だから、共通テスト後の自己採点による判定が思わしくない場合、安易にランキング下位の大学に志願変更をする人が圧倒的に多い。親御さんがそう望むことも、現役生の場合は担任や進路指導の先生がそう誘導することも多いし、浪人生も予備校のチューター等の性格によっては、とかく安全パイを薦められることがある。

すると、皆さんの志望校には、勝負回避組が上からもなだれ込んで来るし、下からも脱落していく。そうして2次試験の当日には、受験メンバーが大幅に変わっているのだ。

そしてメンバーの変化が、皆さんに一方的に不利に働くとは限らない。上からなだれ込んでくる人も、もともと勝負を回避するような弱気組である。戦いにおいては、どんなに実力があっても、弱気な人は何かの拍子にすぐに負ける。だからこそ、勝負に出るべき時にちゃんと勝負に出られる人には、常に勝機があるのだ。

実際に勝てるかどうかは分からないが、少なくとも判定を出した段階とは条件が変わっている。その変化が凶と出る場合ももちろんあるが、吉と出る場合もあるわけだ。やはり、やってみないと結果は分からない。

 

④学部学科によっては、志望者の母集団が小さすぎ、数点違えばすぐに判定もくつがえるし、合否の結果も変わる。

 

大学は学部学科に細分されており、全国模試や共通テストなどの大規模な試験でも、判定を算出するための母集団が小さくなることがかなり多い。小さな母集団でデータを出しても、メンバーや人数が変わればすぐに判定は動く。だからこそ「よほどかけ離れて上か、かけ離れて下か」でない限り、判定がそもそも当てにならないという懸念が常に生じる。

ただし医学部医学科のように、「渡り鳥の群れのように」多くの受験生がかたまってあちこちに移動しながら受けるような試験では、「どの学校に行っても、ある程度似たような人が受けている」現象が起こることはある。そうなると、メンバーの変化によって番狂わせが生じる幅も小さくなるだろう。もともと一定の層の中に入っていなければ勝負に参加できない試験になりやすいかもしれない。

が、上記①③の要因は、どんな試験でも常に働き、無視できない影響を与える。やはり試験は水ものとしか言いようがなく、試験本番の結果は常に予測を裏切る。だからこそ判定が悪かった受験生もあきらめてはいけないし、判定がよかった受験生も油断してはいけないのである。

 

最後に「へたにA判定を取ってしまい、守りの立場に立たされてしまった不幸な受験生」に、今まで経験的に有効だったアドバイスをひとつ。

誰に聞いたのか忘れてしまったが、ボクシングの世界チャンピオンか誰かのインタビューだったと思う。タイトル防衛戦で無敗を誇るチャンピオンにその秘訣を聞いたら、

 

「自分は、自分がチャンピオンだとは思わないことにしている。防衛戦になったら、相手(挑戦者)がチャンピオンで、自分が挑戦者だと無理やり思い込む。そうして、チャンピオンからベルトをもぎ取ってやると、毎回、闘志を燃やして挑むのだ」

 

という意味のことを言っていた(ような気がする。誰の言葉だか完全に忘れてしまったので、頭の中で多少話が作られているかもしれない)。

守りの立場に立たされると、人間は弱くなることが多い。守りの立場なのに強い人というのは、頭の中でこのような「演劇」をやっているのかもしれない。自分は守っているのではなく、攻めているのだ…と。

 

共通テストの結果がよかった諸君も、挑戦者気分を取り戻して、どうかチャンピオンベルトをもぎ取りに行ってください。Q氏もチャレンジする受験生を応援します。