今日は前回出題した問題の解答を書いていきたいと思います。
まず、以下に問題を再掲いたします。
【チャレンジ問題】a,b,cは正の実数で、a+b+c=1を満たしている。
このときa²+b²+c²≧1/3(3分の1)が成り立つことを証明せよ。
まずは若干テクニカルではあるものの高校1年生でも対応可能な解答から。
コーシーシュワルツの不等式を用いて解くというものです。
【解答1】実数p,q,r,x,y,zについて次の不等式が成立する。
(p²+q²+r²)(x²+y²+z²)≧(px+qy+rz)²
(等号はp:q:r=x:y:zのとき成立する)・・・・・(※)
(※)の式に(p,q,r)=(a,b,c)および(x,y,z)=(1,1,1)を代入すると
(a²+b²+c²)(1²+1²+1²)≧(a+b+c)²
またa+b+c=1であるから、3(a²+b²+c²)≧1が成り立つ。
等号は a:b:c=1:1:1およびa+b+c=1のとき、
すなわちa=b=c=1/3において成立する。
したがって、a²+b²+c²≧1/3が成り立つ(証明終)
コーシー・シュワルツの不等式は出来れば証明してから用いるのが望ましいです(私が採点官なら証明が無くても減点はしませんし、上記の答案でも証明はカットしていますが、最低限正しい用法で記述しましょう。特に等号成立条件に言及してない答案は大減点は避けられません)。
〈証明は様々ありますがベクトル(p,q,r)とベクトル(x,y,z)について内積の定義式を立ててから証明するのが一番簡単です(今回は詳細は省略します)〉
コーシー・シュワルツの不等式を用いる問題を解いて間もない受験生にとっては一瞬で解ける問題かもしれませんが、この問題には実は「ある仕掛け」が施してあります。
それはa,b,cを正の実数とすることで、相加平均・相乗平均の不等式を用いるようミスリードするということです。
a,b,cが相加平均・相乗平均の不等式を用いた変形をすると、abc≦1/27(3数の積abcの最大値が27分の1)という式が出ますが、この式をいくら頑張って用いても恐らく結論を導くことはできません。
この方針を取ってしまった時点で罠に嵌ったことになります(笑)。実際のところコーシーシュワルツの不等式よりも相加平均相乗平均の不等式の方がはるかに使用頻度が高いため仕方のないことかもしれませんが・・・。
本来「a,b,cは実数で、a+b+c=1~」という設定でも成立するはずの問題をわざわざ「正の実数」と限定したのもこういう意図があります(本当はこれだけではありませんが)。
コーシー・シュワルツの不等式を用いることを選択肢の一つに常に入れているような受験生にとってはもしかしたら簡単すぎる問題だったかもしれませんが、上記の「ミスリード」を華麗にすり抜けて正答出来た事には大いに自信を持ってもらって大丈夫です!
ただし、このような問題ではさらに推奨される解答方針があります。
それについては来月頭の記事で解説いたします!
余談ですが、コーシーシュワルツの不等式の証明は「テクニックの宝庫」なので複数の証明法を学習しておくことをお勧めします(当ブログでも後々扱います)。
では今日はここまでといたします。
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