北朝鮮ミサイルが飛び交う中、今までは「魔の11月をどう乗り切るか」の話題を中心に、ごくごくまじめな「受験生の悩み相談」記事をお届けした。
だが、「ぶっちゃけた」話、読者の皆さんの中には「実は『それ以前の問題』に悩んでいるんだけど…」という人も少しはいるのではないだろうか。
あまりいないことを祈るが、少数であっても、いることはいるはず。
そう、受験ブログではタブーとされていそうな(?)「ヤル気が出ないんですけど、何か?」問題である。
本日は、そこに果敢に斬り込んでみよう。
1月からの本番を控えた医学部受験生が、11月というこの時期に「ヤル気が出ない…」とつぶやいているのならば、もう勝負は見えたと言えるかもしれない。もうあきらめろ、というささやきが聞こえる。
それでも、ヤル気が湧かないのが一時的なことなら、誰にでもある現象だから、あまり気にする必要はない。単に疲労がたまっているだけの可能性は高いし、ちょっと寝るだけ、リフレッシュの時間をとるだけで、気分が変わってくる。
が、問題は「永遠にヤル気が出そうにない」受験生である。
今どき、マージャン三昧、パチンコ三昧で勉強しない…という受験生はあまりいないだろう。昭和じゃないんだから。
(昭和にはいたんですか? という問いへの答えは ‘Yes’ 。特に浪人生に、そういう人たちがいた。酒・タバコは当たり前。「不純異性交遊」率もそこそこ。おっさんである。ハタチそこそこなのに。
今、彼らはどこに行ったのだろうか。ネクタイを締めて、或いは作業服を着て働いてるのかな。
大学、特に医学部の「裏口入学」などの不祥事も多かった。メチャクチャな時代である。)
が、ゲーム三昧、スマホ三昧なら、今でも山ほどいそうだ。
「ヤル気に波がある」のではなく、「ほぼ、永遠にヤル気が出ない」タイプの受験生。
だからと言って大学入学を諦めて働くわけでもないのだから、それなりにプライドは高い。「オレはまだ本気出してない系(仮)」と呼んでもよいだろう。
以前は圧倒的に男子に多かったが、今は男女あまり関係ないのではないか。そもそも、わたくしQ氏が記憶しているような昭和末期や平成初期は、女子の4年制大学進学率がまだ低かったから、女子の抱える問題が外からなかなか見えなかった。
このタイプの「まだ本気出していない系」受験生が、本番が近づけば本気を出すのかというと…一般論から言うと、まずムリである。
冷たいようだが「いま本気を出せない人は、あとから本気を出すこともできない」と、物分かりの悪いオジサン的な格言を引き合いに出すしかない。
ごめんね。物分かりの悪いオジサンで。来世では物分かりのよい青少年に生まれてくるよ。
が、世間には「本気を出せない」人をいじめ、追い込む風潮がある。Q氏は一方で、その風潮も違うのではないかと思っている。むしろ断乎として反対。
にんげんだもの。いつも都合よくヤル気が出て、都合よく過酷な追い込み時期を乗り切れ、都合よく勝利を手にすることができる人たちばかりならば、世の中は安っぽい青春アニメみたいな、ハッピーエンドの地獄になっているはずではないか。
「結果を出す」…なるほど。結果は大切だ。特に「最近の若者」を見ていると、とかく「コスパ」を重視する発言が多い。なるほど。コスパがよければ、何となく気分はいいかもしれないね。スーパーの割引セールなんか。タマネギが安い。
だが、果たして徹頭徹尾「コスパの良い」人生というのはありうるのか。もし、結果というものが必ず出るものであるならば、それが出る前には「結果の出ない時期」もまた、必ず存在するはずではないか。その時期の長短を、あらかじめ予測できるだろうか。
まして、結果というものが必ず出るとは限らないとしたら、どうだろう。結果にたどり着くまでの「コスパ」を論じることに、果たして意味はあるのか。
結果が出せない時期に少しも悩まずに済んでいる人というのが、果たして世の中にどれだけいるのか。
まわりの人々は、「結果を出す」ために一直線、わき目もふらず受験勉強にいそしんでいるが、自分にはとてもではないけれど、そういう真似はできない…。
「ヤル気が出ない」人たちというのは、要はこういうことを悩んでいるのではないだろうか。自ら不マジメの烙印を押し、周囲からもそう見られながら、実は内心、かなり深刻な「哲学的問い」に悩んでいるというのが、かれらの肖像である。そして、しばしば自分で、心の中の問いをはっきりとした言葉にできずにいる。
はっきり言葉にできず、今宵もゲーム。朝までスマホ。
「怖そうに見えるけど、意外と優しい・意外にオチャメ」というような人はよくいる。が、同様に「不マジメそうに見える人は、内心はあんがいマジメ」なのである。マジメに悩んでしまうから、悩まない人なら簡単にできることが、できない。
どうだ、そこの受験生諸君、図星だろう。
…というところで紙数が尽きた。次回もこの「ヤル気が出ない問題」を少し掘り下げよう。
(近々「深掘り」という新しいコトバが流行っているが、国語講師を標榜しているQ氏は、こういう新しい言い回しにすぐ飛びつくオトナへの不信感を隠せないたちなので、「掘り下げ」はするが、頼まれても「深掘り」などしない。)