オンライン医学部予備校

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考えないヒト

「人は考えなくてもいいことばかり考え、考えなければならないことをちっとも考えない」かつてこのことに気づいた時、わたくしQ氏は雷撃に打たれたようなショックを受けた。人類に普遍的な真理の一端に触れた気がしたのである。

 

例えば昨日、マウンティング大好きな友人から言われた心ないひと言。これは、最低1週間は心を占領する。「いや、お前の言っていることは間違ってる!」「なんで、そんなひどいこと言うの…」等々、えんえん脳内ディスカッションが始まる。

 

が、数3の、例のあの難しい問題については…考えない。結果、何度も同じところでつまづく。

また、今後の自分の人生をどうしたらいいのか…そもそもあまり考えていない。浪人しても医学部がだめだったらどうしよう。考えない。なるようになる、としか思っていない。

本当に、なるようになるのだろうか。

 

また、拡大する貧富の格差はどうしたら解消できるのか。ウクライナ戦争の行方は。日本経済再生のカギは。超少子化・超高齢化社会への処方箋は。憲法は改正すべきか。死刑は存置すべきか。

何も考えていない。

ひとはなぜ生きるのか。人生にはなぜ苦しみがあるのか。愛とは何か。存在とは何か。神仏は果たして存在するのか。

何も考えていない。

 

…なあんだ。結局なにも考えてないじゃないの、あなた。

でも、「キンプリ」の平野くん、岸くん、神宮寺くんはどうして脱退しちゃうの…とかは、えんえん考えてるでしょう。悪いけどQ氏にはお見通しなのである。

 

いや、受験生の皆さんをからかっているのではない。

人間とはそういう存在だ、ということを伝えたいのである。

これは、たぶん真理ではないかと思う。

人間に関すること、しかも身近な人間に関することが、人間のアタマを自動的に占領するようにできているのである。

 

脳は人体の中でも、特にエネルギー消費の激しい器官だ。医学部出身でないQ氏が偉そうに人体の話をするのはおこがましいが、広く共有されている科学的知見だから、この程度は話題に上らせても許されるだろう。脳は存在しているだけで栄養源のグルコースを大量消費し、その消費カロリーは人体の基礎的な消費カロリーの20~25%を占めるという。以上、受け売り。

 

実は、考えても考えなくても脳のエネルギー消費量はあまり変わらない…というのは面白い知見だが、勉強するとメチャクチャ疲れる。これは、緊張による血圧の上昇など、肉体的なエネルギー消費が原因らしく、例えば世界的チェス・プレイヤーは対局後、体重が10kgも落ちる例があるという。これも受け売り。

 

身体を動かしていないから何も活動していないように思うが、実は数3の問題をひたすら解いたり、英語長文を次々と読解したりしていると、緊張によって確実に体力を消耗し、軽くキックボクシングの練習をしているような状態になるようだ。

 

これは「勉強するとやたら疲れて、ひどい場合は数日立ち直れなくなる」「勉強中は、妙に甘いものが食べたくなる」などの経験則を裏づける。Q氏は受験勉強をしていた頃に、ガルル…と野犬のようにチョコレートをむさぼり食っていた記憶がある。もはや若さが遠のいた今では、昔より確実に集中力がなくなったし、同じ精神的作業をしても、格段に疲れやすくなった。

 

人間は、このような消耗戦を嫌い、肉体的緊張をともなう「思考」を極力避けるようにできているのではなかろうか。思考は脳だけの問題ではなく、実は身体的な「エクササイズ」に等しいのだ。

 

だから、ヒトは体力を温存するため、むしろ「考えない」状態を好む。その「考えなさ」ときたら、ライオンが狩りのとき以外は、ひたすらグウタラ寝ているのと同じことなのである。狩りをしていない時のライオン、メチャクチャだらしないでしょ。

それを、むりに考えようというのだから、受験勉強がいかに「生物として不自然なことか」分かるだろう。それを、われわれは敢えてやっているのだ。

 

けっきょく、運動によるダイエットと同じことを、受験生諸君はしているのである。続かなくて当然、と考えた方が利口だろう。

 

おそらく賢いヒトなら、このように「ヒトは考えない」という科学的知見を前提として「考える」。そこを「何がなんでも根性で乗り切れ!」とか、かつての大日本帝国陸軍みたいなことを言っていたら、たちまち戦いには負けてしまう。昭和は遠くなりにけり。

このへんは、あくまで合理主義に徹するのが正解だと、さほど賢いとはいえないQ氏も確信している。

 

ではその大変な受験勉強をどうするか。次回につづく。